在宅療養の高齢者に対する訪問看護師の看取りケア

在宅での看取りは、住み慣れた自分の家で最後まで過ごしたいという希望するがん末期の患者さんや、老衰で亡くなっていく人を対象としています。人は残された時間においても自分らしく生きることや、家族の一員として役割を果たすことを求めます。そうした時間を支援するために訪問看護師ができることはたくさんあります。

がん末期の場合、高齢者だけでなく若くして逝く人もいるので、看取り後のご家族の悲嘆は深く、健康状態を崩してしまうことも少なくありません。そのため、訪問看護においては看取りの後のケアも重要であり、遺族への訪問、手紙・電話などによって心身両面をサポートします。

老衰の場合には、ご家族は衰えていく姿を目の当たりにすることになります。そのなかで医療処置をどこまで行うのかといった選択に迷う場面もあります。訪問看護師は、死に向かう経過の中で、常に語家族の不安や苦悩に配慮することになります。

また、利用者さんのケアをできるだけ一緒に行い、本人の身体的変化を肌で感じてもらえるように努めているのです。その経過のなかで、ご家族は死を自然の流れとして受け止め、利用者さんの長きに渡る人生を愛しみ、穏やかに見送ることができるのです。

訪問看護師は、人間が最後の時間をその人らしく過ごすために、多くの役割を果たせる重要な存在です。また、ケアを行う看護師も看取りを通して多くのことを学びます。

  

24時間対応可能な人材確保が課題:SCU(脳卒中集中治療室)

医療現場で活躍する医師を紹介するドキュメンタリー番組をよく見ますが、福島孝徳氏や上山博康氏などの世界トップレベルの手術手技を持った方々の医師としての「矜持」、ほぼ年中無休の生活を目の当たりにすると、どの世界でもトップに立つ人間はやっぱり凄いなぁと感心させられます。

最近ではNHK「プロフェッショナル~仕事の流儀」で、虎ノ門病院の血管内科医・谷口修一氏が登場していましたね。患者の多くは他院で治療が難しいとされた難症例。あらゆる手を尽くしても、患者の7割が助からない世界で、心がポッキリ折れることなく常に治療に邁進する姿には心を打たれました。

社会の高齢化で循環器疾患の患者が増えると予想される将来、脳卒中に特化したSCU(脳卒中集中治療室)の存在意義が高まることは間違いありません。治療効果の向上が期待され、発症3時間以内の脳梗塞に有効なtPAが保険適用となって必要性は高まる一方です。

SCUでは脳卒中治療の専門的スキル・知識を持つ医師、看護師、放射線技師、理学療法士らで作るチームが、専門の病棟や病床で総合的な治療を行います。日本脳卒中学会の治療ガイドラインで、脳卒中患者を発症早期からSCUで治療すれば、死亡率の減少、在院期間の短縮、退院して自宅に戻る割合の増加、5年後のQOL(生活の質)が改善するとの海外の研究報告が紹介されています。日本でも2006年度の診療報酬改定で、SCUの入院医療管理料が新設されました。

施設基準は丸1看護師の数は常時、入院患者3人に対して1人以上配置、②常勤の理学療法士か作業療法士を1人以上配置、③CTやMRIが24時間使用可能ーなどとなっています。

しかし、日本脳卒中学会の研修施設、日本脳神経外科学会の専門医訓練施設のうち、SCUを設置している病院は3割に満たず、24時間対応できる人員態勢などの課題が指摘されています。tPAなどの脳卒中治療に詳しい脳神経外科医や看護師が少ないほか、脳卒中の診断に不可欠なCTなどを扱う検査技師の当直体制も必要なことから、厚生労働省の施設基準自体、現場のニーズ以上に厳しすぎるという意見も出ています。

  

医療機関への「フリーアクセス」が抱える問題点

「フリーアクセス制度(患者は症状に関係なく、どの医療機関でも自由に受診できる)」と呼ばれている日本の国民皆保険制度ですが、この性質上、本来なら入院患者や救急患者を対象として高度な医療を提供すべき大病院に、軽症の外来患者が相次いで受診にくるようになり問題となっています。

患者が集中すると、そのキャパシティを超えた病院は救急患者の受け入れを拒否せざるを得ません。プライマリーケアの担い手としての地域病院をはじめとする診療所などと大病院との間の連携不足や情報の共有不足が、医師のマンパワーを減らしているのです。

また、24時間、365日、夜間も休日も関係なく、発熱や腹痛といった軽症の患者がコンビニ感覚で夜間の救急を利用するケースが目立っています。このような患者の対応で、当直の医師や看護師は一睡もできないまま、翌日も医療現場で働くのです。この状態を解消せずに、増加する医療事故に歯止めをかけることは容易ではなく、医師賠償責任保険へ入る勤務医が増えているのも当然です。

医師の過重な労働負担が、「立ち去り型サボタージュ」という医療崩壊を招いている現状にも関わらず、主な医療従事者の業務行為を定めた医師法は制定当時から大きな改正が行われていません。すなわち、正当な理由なく患者を拒否できないのです。その規定が医療現場の実態にあっていないばかりか、分業体制を構築するうえでの阻害要因にもなっているのです。

また、必要のない軽症での救急車の呼び出しや、検診を受けていない妊婦が、救急搬送で大病院へ運ばれるといった問題など、本来、高度な医療を必要とする人の治療や受診に支障をきたす事態も起こっています。

  

医師が指摘する特定健診の問題点

2008年4月から鳴り物入りで始まった特定健診&特定保健指導。厚生労働省は積極的な受診を呼びかけていますが、医師の間では「腹囲の基準(男性85cm以上、女性90cm以上)に科学的根拠がない」、「糖尿病は痩せ型にも多い」、「検査項目がメタボリックシンドローム対策に偏りすぎている」など様々な批判もでています。

厚生労働省は2012年度の全国目標として特定健診の受診率70%、保健指導の実施率45%、メタボ該当者・予備軍の減少率10%(導入年度の2008年比)と定めました。さらに保険者の種類ごとの目標値も掲げていて、達成率によって各保険者の財政負担に差をつけるシステムを用意しています。

後期高齢者医療制度への支援金の分担額を最大10%の範囲で増減させ、保険者の努力の程度に応じて「アメとムチ」を与えようというもので、保険料に跳ね返ります。ただし、後期高齢者医療制度が廃止予定なので、実施されるかどうかは不明です。

そもそも政府がメタボ対策に乗り出した理由は、このまま行けば医療崩壊に繋がりかねない増大する医療費の抑制でした。小泉政権の医療制度改革の際、厚生労働省が医療費の膨張を抑える有力な方策を示す必要に迫られ、「患者・予備軍が増え続ける糖尿病などを減らせば道は開ける」と、効果などを余り検証しないまま、メタボ対策に飛びついて導入したいきさつがあります。

しかし、少なくとも短期で見ると、多くの患者の発見で医療費は逆に増大する可能性もあり、先行きは不透明といえるでしょう。

  

増大する国民医療費の適正化

10年ほど前は30兆円だった国民医療費の総額は、近年約1兆円/年のペースで増え続けており、このままでは医療保障制度の破綻は免れません。政府は、2025年までに7~10兆円規模の医療費の圧縮を目標に医療費適正化計画をスタートさせました。これは具体的な削減数値や実施手順を厚生労働省が定め、全国版と都道府県版と同時進行で実施し、成果を検証しながら、随時計画を見直すものです。

現在、国民医療費総額の3分の1を老人医療費が占めています。特に、平均在院日数が長い県ほど、老人医療費が高くなっています。そこで適正化計画では、入院日数の短縮を重要施策と位置づけています。具体的には、現在32・2日のところを、2・4日分短縮することを目標にしています。

そのうえで、介護的ケアを目的に高齢者が入院している療養病床を、医療施設ではなく介護保険施設などへと転換することで、老人医療費を大幅に圧縮しています。最終的には全国で35万ベッドある療養病床を15万ベッドにまで削減することを国は地方に求めていますが、計画通りに進むめどは立っていません。

また、全疾患に占める生活習慣病の割合が年々増加していることから、生活習慣の予防と対策に力をいれるようになりました。メタボリックシンドロームの該当者や予備軍を現在よりも1割削減することを目的にスタートした特定健診・保健指導もこの一環です。そのほかではジェネリック医薬品の使用促進なども医療費の圧縮に繋がるものと期待されています。

  

急性期病院の診断群別包括支払い制度(DPC)

病院の収入は「初診料が○点(1点=10円)」、「○×手術で○点」など、全ての医療行為に割り当てられた診療報酬点数によって決められており、その数は6000種類以上にも上ります。これが診療を行った医療機関や、保険調剤を行った薬局に対して報酬として支払われるしくみになっています。

従来、これらの診療報酬は出来高払いでしたが、患者さんの状態にそぐわない検査や治療を過剰に行って、不当に診療報酬を受け取る医療機関が増えて、国民医療費の傍聴の一因となっていることが批判されてたため、部分的な定額払い制度が導入されるようになりました。例えばレントゲンを何枚撮影しても、3枚分しか払いませんよといった具合です。これによって、いりょのひょう人家を図りつつ、医療費の適正化も進めるとの考え方でした。

小泉政権の下で急速に進められた医療制度改革において、新たな定額払い制度として導入されたのがDPC(急性期病院の診断群別包括支払い制度)です。これは病気別、手術施行の有無、合併症の有無などによって病気を約1600種類に分類し、いかなる治療を行っても予め定められた報酬しか支払わないというものです。

政府の目的は、第一義に医療費の抑制であり、病院経営側にも過不足のない医療の提供と、効率化の促進の観点から歓迎されました。その結果、同制度の発足以来、DPC対象病院および準備病院は全国で約1500施設・約50万ベッドとなり、国内ベッドの過半数を占めるようになりました。

DPCの最大の成果は、ベッド稼働率の向上により、患者の入院日数が大幅に短縮されたことです。その一方で、必要な検査、処置、入院日数を医療機関が削減した結果、診療報酬規準の見直し(削減)が行われ、長期的には経営悪化に繋がりかねないという懸念も聞かれます。